小児科看護師が考えた出生前診断

出生前診断

小児ICUナースが夫として出した答え

僕たちは出生前診断を受けませんでした

僕達は迷い何度も話し合い、何度も衝突しました。

そして最終的に、
出生前診断は受けないことにしました。

理由は単純ではありません。

今日はこの決断に至るまでの僕達の思いについて書いていこうと思います。


はじめに

医学的な正解を提示するものではありません。
出生前診断を勧めるものでも、否定するものでもありません。

これは――
小児ICUで働く看護師が、夫として、
そして父として向き合った葛藤の記録です。

これから出生前診断を考えるすべての人のための手助けになれば幸いです。


僕たちが出した結論

僕たちは、出生前診断を受けませんでした。
この決断に至るまで、何度も考えが揺れました。

重い異常があるなら中絶も選択肢
として考えるべきではないか

最初はこう思っていました。

冷たく聞こえるかもしれませんが、小児ICUで働く僕にとって、「その後の現実」は想像ではありません。

入院、手術、在宅医療、通院、きょうだいへの影響、家族が背負うものの重さを
現場で見てきました。

だからこそ

知らないまま生むことは
無責任ではないのか

そんな問いが頭から離れませんでした。

けれど、妻が妊娠し、
エコーで小さな心臓が動いているのを見た瞬間、何かが変わったような気がしました。


エコーを見ると確かに動いている。
まだ数センチほどにも満たないのに

愛着が込み上げてきて「命」が底にあるのを感じました。

お腹が少しずつ大きくなり、
つわりに耐えながら日々を過ごす妻の姿を見ているうちに、頭で考えていた“選択肢”が、急に現実味を失っていきました。

「本当にその選択(中絶)ができるのか?」

当初あった看護師としての理性は崩れ始めていました。


陰性でも、絶対的安心にはならない

僕たちは何度も話し合いました。

たとえ検査を受けて陰性だったとしても、
スクリーニングに含まれていない疾患や、
出生後に初めてわかる病気は存在します。

医学は進歩しています。
ですが、すべてを予測できるわけではありません。


陰性=絶対的な安心ではない。

それならば、
検査で陰性だったとしても
「不確実性そのもの」
は消えないのではないか。

僕たちはそう考えるようになりました。


本当に怖かったもの

正直に言えば、
怖かったのは病気そのものだけではありません。

怖かったのは、

  • 生まれてきた後に病気があると知る絶望
  • 「どうして検査しなかったのか」と後悔する気持ち
  • 陽性結果が出た時の押し潰されそうな重圧
  • その決断を妻に背負わせてしまうこと

出生前診断を受けても受けなくても、100%の安心を手に入れられるわけではない。

それなら僕たちは、
覚悟を決めて自然に自然に任せるしかないのではないか」と思うようになりました。


妊娠が進む中で変わった気持ち

妊娠初期、僕はどこか冷静でした。

つわりに耐えている妻を支えながらも、
自分自身の体には何ひとつ変化はありません。


父親としての実感がわかずどこか他人事のような、そんな思いでした。

しかし、

・エコーで手足を動かす姿
・心拍を聞いた瞬間
・少しずつ出てきた妻のお腹にそっと触れた時

その一つひとつで、
確かに自分たちの子どもが「存在」しているのだと思うようになりました。

「もし異常があったら…」
とリスクばかり考えていた自分は、

いつの間にか、
「頑張っている妻とこれから生まれてくる我が子と一緒に過ごしていきたい。」

そう思うようになりました。


知らないという覚悟

僕たちは最終的にこう考えました。

検査を受けて陽性なら中絶する、
という覚悟が本当にあるのか。

その覚悟が揺らいでいるなら検査を受けることは、自分たちをより苦しめるのではないか。

そしてもう一つ。

陰性だったとしても、
生まれてきたときに予想外の病気がある可能性は残ります。

そのとき、
「陰性だったのに」と絶望する
自分でいたくない。

それなら最初から、
不確実性はゼロにならないものとして受け入れよう。

そう決めました。

知らないことは、無責任なことではない。
「知らないまま信じること」も、一つの覚悟の形だと思ったのです。


正解・不正解ではなく、今の僕たちの選択

この選択が万人にとって正しいとは思いません。

検査を受けることは、情報を得る勇気です。
未来への準備につながります。

受けないことは不確実性を抱える勇気です

僕たちは後者を選びました。

そして何より、

エコーで動くその姿を、
もう「可能性」ではなく「わが子」として見ていたからです


最後に

医療者であっても、
未来を完全に予測することはできません。

だから僕たちは、
予測ではなく覚悟を選びました。

これを美談にするつもりはありません。
正解、不正解はありませんが二人が話し合って出した答えを今は大切に抱えていこうと思います。

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